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読響サマーフェスティバル 三大協奏曲 [雑感]

2020年8月22日。14時~。サントリーホールで。

人気の辻井伸行が演奏するのでチケットは完売していた。1人で2席。ホールを見渡したところ、ステージの背後の席が綺麗に一人置きに座っているのが見えた。雛壇に並んでいる人形のように見え可笑しかった。これから暫くはこういう客席風景になる。

読響の三大協奏曲は毎夏恒例だが、今年は外国人演奏家が参加できなかった。この演奏会ばかりではなく、20/21シーズンは日本人演奏家でまかなわなければならない。日本人演奏家にとっては絶好のチャンスだが…。

指揮は太田弦という若手。1994年生まれと云うから26歳である。

最初がメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリンは、戸澤采紀。この協奏曲は美音でききたいが、冒頭からしてイメージが合わず、そのままで終わる。退屈した。まだ19歳。消耗品で終わらないように望む。

次が、ドヴォルザークのチェロ協奏曲。チェロは佐藤晴真。去年のミュンヘン国際音楽コンクールで優勝した。メリハリ度がまだ足りない。仕方なし。

大トリは、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。ピアノは人気の辻井伸行。期待していた。知人が高く評価していたためもある。きいてみると、可もなし不可もなし。人気の所以が分からなかった。

太田弦の指揮ぶりは問題があった。妙な力瘤が入る。音が生で耳に入り、聴きづらい。今の若手の趣味なのだろうが、ついていけない。

読響のスケジュールを見ると、定期演奏会や名曲シリーズは公演中止である。NHK交響楽団の定期演奏会も来年6月まで中止が決まっている。

「週刊ダイヤモンド」によると、バックのあるNHK交響楽団や東京都交響楽団は安定しているが、江爽快収入に依存度の高い日本フィルや東響は苦境である。

以前から団塊の世代がすべて後期高齢者になる2024年危機がいわれていたが、今回のコロナ禍で前倒しになると思っている。


タグ:三大協奏曲

読響サマーフェスティバル 三大交響曲 [音楽]

2020年8月19日。18時半~。サントリーホールで。

角田綱亮指揮の読売交響楽団。曲目は、「未完成」「運命」「新世界から」の3曲。

オケの配置は、管楽器は距離を置いていた。皆、マスク姿で搭乗したが、演奏の時には外していた。客席は2席に1人。チケット完売とはならなかったので、空席部分もあったが、寂しくはなかった。

角田綱亮は以前に聴いたことがあるが、四角四面な演奏をする人だったという記憶しかない。「新世界より」が一番いいかなぁと予想を立てていた。

結論を言うと、真夏の快演である。元気を貰いました。

「未完成」からして、オケはフル活動で、大交響曲の趣。これ、きちんと完成していたら、「グレート」のような曲になったのではないだろうか。未完成=ロマンティックという先入観を取り除くべきかもしれない。読響の管の優秀さを感じた。

「運命」も「新世界より」も読響の音の饗宴に圧倒された。角田綱亮の指揮もこじんまりとまとめるというところがなかった。

外面的すぎるという批判はあるだろうが、この猛暑、コロナ禍中の演奏会である。こういう演奏が適している。

最適な演奏スタイルも、その時の置かれた状況によって異なる。

コロナ禍中の演奏会 [音楽]

コロナ禍中の演奏会へ出かける。

8月6日。川崎ミューザで神奈川フィルの演奏会を聴く。

指揮は、渡邊一正。

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プログラムは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲3つ。

①第1番 (ピアノ:黒木雪音)

②第4番 (ピアノ:阪田知樹)

③第5番 (ピアノ:清水和音)

コロナ禍中の演奏会はどんなものか?という好奇心で出かけたものである。入口でアルコール消毒、チケットは半券は自分で切り取る。ドアは係員が開ける。係員もマスク姿なのはもちろん、フェースガードをしている者もいた。帰りは、集中しないように時間差の退場だった。 

チケット枚数は600枚限定。空席もあったので400人ぐらい。ホール内はバラバラ、スキスキ。気が抜けてしまう。ステージはオケの団員は間隔を開けず、通常通りの配置だった。45人ぐらいの編成。

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客席の様子には戸惑うが、演奏が始まれば、そういう戸惑いはなくなった。

オケは、1番の出だしは頼りなかったが、徐々に通常に戻る。もちろん、非力なところもあった。

1番の黒木雪音は目一杯、第4番の阪田知樹は熱演、第5番の清水和音は余裕綽々。客にアピールするには、余裕が必要だということに気付いた演奏会だった。

この演奏会の模様は、1000円でネットで聞くことが出来る。



映画「最後に笑う男」 京マチ子の最初の大映作品 [映画]

題名を聞いたこともない映画だ。DVDで京マチ子主演の「痴人の愛」を購入する。2枚組で「痴人の愛」のほかにこの「最後に笑う男」のDVDがついていた。付録のような気がした。

1949年の大映作品。京マチ子は大映の女優だったが、この映画が初めて出演した大映映画である。クレジット・タイトルでは「京マチ子(松竹歌劇団)」と付記されている。京マチ子が初めて出演した映画は戦争中の松竹映画であるという。(見たことがない。)

京マチ子は、戦後の大阪松竹歌劇団の人気女優だった。豊満な肢体とダイナミックな踊りで観客を魅了したという。この映画の最後で、その踊りを見せてくれるが、体格が良くなった現代でも立派に通用する。

この映画では主人公に想いを寄せる踊子を演じる。純情な役である。

この「最後に笑う男」は奇妙な題名で、題名からは、どんな映画か見当がつかない。一言でいえば、サーカス一座の物語である。

主人公を演じるのは滝沢修で、かって東京で活躍した空中ブランコの名手、愛弟子の女を他の男に奪われて、酒浸りで零落、今は大阪のサーカス団でピエロになっている。

そこに、かっての愛弟子(日高澄子)とその夫(二本柳寛)がやってくる。いわば、三角関係の話である。

二本柳寛と日高澄子の相方になる受け手の空中ブランコ乗りが負傷し、出場できなくなる。ピエロの滝沢修が代役を務めるが、三角関係の感情のもつれから、どうなるだろう?というサスペンスが生じる。手を離せば、恋敵の日本柳寛は落下し、死んでしまうだろう。

プログラム・ピクチャーであっただろうから、結末は無難である。

三角関係と空中ブランコの組み合わせ。こういう映画があったな。サイレント映画の名作「ヴァリエテ」である。エミール・ヤニングスの大芝居を堪能できる作品だった。若い妻にゾッコンで、その溺れっぷりが生々しかった。若い妻の脚をなで回す場面など官能の高ぶりの描写が見事だった。この若い妻が空中ブランコ乗りに惚れてしまうことから殺意が生じる。

「ヴァリエテ」もDVDで見ることができる。

「最後に笑う男」は戦後大量に製作されたプログラム・ピクチャーの一つである。当時のプログラム・ピクチャーは外国映画の模倣が多かった、著作権はさほど問題にならなかった時代である。

重量級の作品より、大量生産されたプログラム・ピクチャーの方が懐かしくなる。1949年という世相と風俗は、こういう映画の方に色濃く出るからだ。

昔を懐かしんでも仕方がないのかもしれないが…。戦後に比べれば、現代の生活水準は信じられないぐらいよくなったが、幸福になったとはいえない。時々不思議に思うことである。