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映画「最後に笑う男」 京マチ子の最初の大映作品 [映画]

題名を聞いたこともない映画だ。DVDで京マチ子主演の「痴人の愛」を購入する。2枚組で「痴人の愛」のほかにこの「最後に笑う男」のDVDがついていた。付録のような気がした。

1949年の大映作品。京マチ子は大映の女優だったが、この映画が初めて出演した大映映画である。クレジット・タイトルでは「京マチ子(松竹歌劇団)」と付記されている。京マチ子が初めて出演した映画は戦争中の松竹映画であるという。(見たことがない。)

京マチ子は、戦後の大阪松竹歌劇団の人気女優だった。豊満な肢体とダイナミックな踊りで観客を魅了したという。この映画の最後で、その踊りを見せてくれるが、体格が良くなった現代でも立派に通用する。

この映画では主人公に想いを寄せる踊子を演じる。純情な役である。

この「最後に笑う男」は奇妙な題名で、題名からは、どんな映画か見当がつかない。一言でいえば、サーカス一座の物語である。

主人公を演じるのは滝沢修で、かって東京で活躍した空中ブランコの名手、愛弟子の女を他の男に奪われて、酒浸りで零落、今は大阪のサーカス団でピエロになっている。

そこに、かっての愛弟子(日高澄子)とその夫(二本柳寛)がやってくる。いわば、三角関係の話である。

二本柳寛と日高澄子の相方になる受け手の空中ブランコ乗りが負傷し、出場できなくなる。ピエロの滝沢修が代役を務めるが、三角関係の感情のもつれから、どうなるだろう?というサスペンスが生じる。手を離せば、恋敵の日本柳寛は落下し、死んでしまうだろう。

プログラム・ピクチャーであっただろうから、結末は無難である。

三角関係と空中ブランコの組み合わせ。こういう映画があったな。サイレント映画の名作「ヴァリエテ」である。エミール・ヤニングスの大芝居を堪能できる作品だった。若い妻にゾッコンで、その溺れっぷりが生々しかった。若い妻の脚をなで回す場面など官能の高ぶりの描写が見事だった。この若い妻が空中ブランコ乗りに惚れてしまうことから殺意が生じる。

「ヴァリエテ」もDVDで見ることができる。

「最後に笑う男」は戦後大量に製作されたプログラム・ピクチャーの一つである。当時のプログラム・ピクチャーは外国映画の模倣が多かった、著作権はさほど問題にならなかった時代である。

重量級の作品より、大量生産されたプログラム・ピクチャーの方が懐かしくなる。1949年という世相と風俗は、こういう映画の方に色濃く出るからだ。

昔を懐かしんでも仕方がないのかもしれないが…。戦後に比べれば、現代の生活水準は信じられないぐらいよくなったが、幸福になったとはいえない。時々不思議に思うことである。



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