５０年祭

母が死んで、今年で５０年になる。半世紀である。神道では死んで５０年たつと、死んだ者は神様になる、ということになっている。

墓前で禰宜を呼んで、５０年祭を行う。禰宜さんがいうには５０年祭を行うのは初めてだという。初めての経験でしたという。

仏教の場合は周忌はお寺で管理できているだろうが、神道の場合はそういうことがない。

家で覚えていて、神社に依頼しなくてはならない。５０年もたてば、忘れるのが普通だろう。

我が家の場合は、私が一宮巡りなど神社に興味があったので、５０年祭のことが頭に入っていた。だから、忘れることがなかった。

昔は人生５０年だった。普通なら、５０年もたてば、故人を知っているものは生きていない。故人は漠然としたご先祖様と云うことになる。５０年祭の意義はそこにあたのだろう。

今は長寿化しているので、本来なら８０年祭か１００年祭ぐらいが妥当ということになるのだろう。

母の場合、若くして死んだので、子供である私が５０年祭を神社に依頼できたのである。


人は２度死ぬ。

一度目は、本人が死ぬとき。

二度目は、本人のことを覚えている人間がすべて死んだときである。

私もやがて死ぬ。しかし、私を覚えている縁戚、知人がいる。彼らがすべて死んだとき、私は完全にこの世界から消え去ると考えている。

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