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「浮草物語」(小津安二郎) [映画]

小津安二郎監督作品。1934年製作。アメリカはとっくにトーキーに切り替わっていたが、小津安二郎はサイレント映画にこだわった。日本最初のトーキー映画は1931年の「マダムと女房」である。

小津安二郎は、「浮草物語」を戦後にカラー映画で再映画化している。

ドサ回りの芝居一座の話なのだから、戦前版の方が雰囲気が良く出ている。戦前、ドサ回りの旅役者は河原乞食と蔑まれ、堅気の世界とは区別されていた。まともな人間は役者などにはならなかった。女役者は、枕営業が当たり前の世界だった。戦前の検閲は厳しかったから、ハッキリとは描いていないが。

坂本武の一座の座長は、旅先で知り合った女に生ませた息子がいるが、堅気にさせたいばかりに、父親と名乗ることができない。その苦渋から旅芸人の悲哀が浮かび上がる。

小津安二郎は、何か、淡々と映画を作り上げているように見えるが、この映画の盛り上げ方は並々ならぬものがある。クライマックスの作り方のうまさは注目に値する。
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