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出勤病 [雑感]

その男を初めて見たのがいつだったかはもう忘れた。10年前か、それとも15年前か。

我が家の前を、片手に鞄を持って駅の方向へ歩いて行った。スーツ姿ではない。

我が家の前は、駅への通勤路になっている。出勤するのかと思った。11時過ぎだっただろう。出勤時間にしては遅すぎる。

私はお午時に家を出た。駅へ向かった。そうすると、駅の方向から先ほどの男が歩いてきた。

年齢は40代半ばか…。おかしいとは思ったが、その時はそれで終わった。

その後、頻繁にその男を見かけた。私も退職して暇があったから、付近を歩くことが多かったからである。

鞄を持って駅に出かける。出勤するように見せかけているのか。しかし、すぐ戻ってくるのがおかしい。働いているように思わせるには、どこかで時間を潰さなくてはいけない。

その苦しさは良くわかる。なぜなら、以前、私もそうしていた時があったからである。

その男が習慣的にに家と駅を往復するだけとわかったのはしばらくしてからである。真面目な顔で、怒ることもなさそうだ。

真面目、小心な男は怖いところがある。


最近、もう一人の駅へ行く老人に気がついた。猫背、片脚を引きずる。杖をついている。格好はこざっぱりとしている。型から鞄をぶらさげている。

最初はリハビリのために歩いているように思った。あるいは、そうかもしれない。

暑さ、寒さも関係なく、足を引きずりながら歩いている。ごくたまに奥さんが一緒なのが救いだが、ほとんどは一人歩きである。

人間は過去を引きずって歩く。リセットはできない。


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