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「J・エドガー」(クリント・イーストウッド) [映画]

FBIの初代長官、J・エドガー・フーヴァーを描く。監督はクリント・イーストウッド。

クリント・イーストウッドは反骨精神旺盛だから、フーヴァーのような人物は嫌いなはずだ。実際、この映画で描かれるフーヴァーはイヤな奴である。

晩年の1960年代,70年代に自伝を口述する場面と過去の場面が交錯して描かれている。色彩を落とした、陰影に富んだ画面で、華やかさはない。

自分の感想では、デジタル撮影の陰影はフィルム撮影に及ばない。長年、慣れ親しんだ感覚とは違う。柔らかみがない。昔を懐かしんでも仕方がないが。

富士フイルムが映画撮影用のフィルムの生産を中止すると発表している。時代が変わったのだ。

この映画の印象は芳しいものではない。話がまとまっていない。理由を考えると、回想形式で描いているものの、その回想する時点が動いていることにある。60年代に回想し、70年代に回想する。

回想する時点はある時点に固定する必要がある。そうしてこそ、回想形式の利点が生かせる。過去の出来事が一点に集約されてこそ回想系形式の強みが発揮される。この映画はそうではない。混乱した印象を受けるのはそのためである。シナリオの構成不備によるものだ。

この映画では、フーヴァーはマザコンだし、ホモでもある。(ホモについては暗示のみ。)映画は彼の人物像を描くが、いかにFBIの組織作りあげたかという面から見ると物足りない。1924年に局長に就任してから1972年に死ぬまで、48年間、FBIのトップであり続けたのだ。軽量組織を巨大組織に仕立て上げた力量はあるはずだが、この映画では描かれていない。

マザコン場面は死んだ母親のドレスを着る場面に集約されている。この映画の価値はここにある。忘れられないだろう。

もちろん、この場面は作者の想像である。現実のフーヴァーがどうであったかはわからない。生前から、女装趣味やホモ趣味は噂されていたという。

私は、政治家や経営者などの権力者の私生活には興味が薄い。彼らの不道徳をなじっても仕方ない。日常、権力を行使すれば、性的に異常になりやすいと思う。

私生活はどうであれ、いい政治、いい経営をしてもらえば、それでいい。


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