SSブログ

2016.10.25 「ナクソス島のアリアドネ」 [音楽]

2016年10月25日。東京文化会館。19時~21時40分。ウィーン国立歌劇場の来日公演の初日を聞く。プログラムはリヒャルト・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」だった。

指揮はマレク・ヤノフスキ。

座席は3階正面席の第2列。前の第一列の席が空席で見通しがよかった。歌手の声はよく響き、オケはやや引っ込んでいるように聞こえた。

「ナクソス島のアリアドネ」はバックステージものである。パトロンの大富豪の気まぐれで、悲劇と喜劇を同時に演じなければならなくなる。このストーリーを知った時は、どういう舞台になるのか見当がつかず、どういう結末に持っていくのか、作劇上の興味が起きた。

脚本はホフマンスタール。

全2幕だが、第1幕は上演前のドタバタで、第2幕がオペラ公演である。

ストーリーの展開に興味があって行ったわけだが、実際は、途中からは歌に幻惑され、ストーリーは気にならなくなった。歌手は全員優れていたように思う。特にバッカス役のステファン・グールドの声量には圧倒された。アリアドネ役のグン=ブリット・バークミンも素晴らしかった。クライマックスの感動は圧倒的だった。

そのまま帰宅したが、一晩があけて考えた。そもそもこれはどういうオペラだったのか?話の辻褄は合うのか? すぐ頭でっかちになって考えてしまうのは自分の習性でこれは治らない。諦めている。

「ナクソス島のアリアドネ」という曲名で、ヨーロッパの知識人はどういう話かすぐ理解できたはずである。ギリシャ神話が下敷きになっているからだ。

テーセウスが、迷宮の奥に住む怪物ミノタウロスを退治しようと迷宮に入るとき、迷宮に迷わないようにとアリアドネは糸を渡す。これが”アリアドネの糸”である。テーセウスがミノタウロスを殺した後、二人は海に出て、ナクソス島に着く。

ところがここナクソス島でアリアドネは悪阻にかかり病に伏す。そんなアリアドネからテーセウスは逃げてしまう。(えらく無責任な男であることよ。ギリシャの昔から男は女から逃げたがったらしい。)

ナクソス島に一人置き去りにされたアリアドネは絶望し、死を願う。このオペラの第2幕は、ここから始まる。だから、このオペラは「ナクソス島に置き去りにされたアリアドネ」といった方がスンナリ理解できる。

アリアドネの哀しみの歌から第2幕が始まるわけだが、喜劇団のツェルビネッタは「男はみんな勝手なもの」とからかう。これで悲劇と喜劇の同時進行となるのかどうか。ツェルビネッタをはじめとする喜劇役者たちの役割は道化と同じである。

現在上演されているのは改訂版で、1912年に初演された時のものとは違う。初演時にはモリエールの「町人貴族」が劇中劇として演じられた。これなら悲劇と喜劇の同時進行である。

現行のバージョンは喜劇役者は従で、アリアドネの悲嘆とロマンスを盛り上げる役割を果たす。この方がわかりやすい。初演時のものはDVDで発売されているので興味が起きるが、海外版であり日本語に翻訳されていないので難がある。

「ナクソス島のアリアドネ」は面白い感動的なオペラである。機会があればもう一度観てみたい。

→→ ということで、チケットぴあで検索すると、11月23日~27日に二期会の公演がある。どうしようか? ……多分というか、きっと、行く。

(データ)

指揮:マレク・ヤノフスキ

演出:スヴェン=エリック・ベヒトルフ(再演演出:カタリーナ・ストロンマー)

美術:ロルフ・グリッテンベルク

衣装:マリアン・グリッテンベルク (洒落ていた。)

<歌手>

テノール歌手/バッカス:ステファン・グールド

プリマドンナ/アリアドネ:グン=ブリッド・バークミン

ツェルビネッタ:ダニエラ・ファリー


(補足)

日経新聞によれば(11月4日)によれば、世界的大スターは、ステファン・グールドのみということである。

他の歌手も手堅かったですがね。ツェルビネッタだけ、やや弱かった。

最近音楽関係の本を読んでいるが、リヒャルト・シュトラウスの評価はほぼ同じで、有り余る才能を持ちながらこれに命を賭けるという必死さがない。情よりも智が優るということである。




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0